音楽 - Music-

映画『Summer Of Soul(サマー オブ ソウル)』と『Harlem Cultural Festival』

summer of soul

『Summer Of Soul』という素敵な映画を観て、とても良かったのでご紹介させて下さい。
音楽が特に好きではない人にも観てもらいたいと思いました。

・映画の概要
・映画の題材でもある「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」の概要
・自分の勝手な見所や感想など

に分けて書いていきます。

映画『Summer Of Soul』の概要

summer of soul
1969年という時代の中行われ忘れ去られていた偉大な野外フェス「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」の映像を約50年の時を経て復活させ、時代背景と合わせながらその当時そこにいた人達のコメントなどを織り交ぜながら制作された音楽ドキュメンタリー映画です。

原題・邦題

Summer Of Soul (…Or ,When the Revolution Could Not Be Televised)
『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放送されなかった時)』

この副題は、Gil Scott- Heronの曲『The Revolution Will Not Be Terevised』から生まれているそうです。

監督・制作総指揮者

Ahmir”Questlove”Thompson(アミール“クエストラブ”トンプソン)
(The Rootsのドラマーです。プロデューサーとしても高く評価されています。)

自分の好きなドラマーの1人です。

クエストラブいわく、初めてこの映像の一部を観たのは、1997年に日本での事だそうですが、その20年ほど後にこの映画のオファーがくるまで、こういった野外フェスがあったこともしらなかったようです。

Hal Tulchinが撮影した映像を手に入れたRobert FyvolentDavid Dinersteinが、Questlovに監督を託し生まれました。

上映時間:118分

製作:2021年製作/アメリカ

2021年1月に開催されたサンダンス映画祭のオープニング作品として上映され、ドキュメンタリー部門審査員大賞と観客賞をW受賞しています。

『Harlem Cultural Festival(ハーレム・カルチュアル・フェスティバル)』の概要


「Harlem Cultural Festival」は、ブラックミュージックのスターたちが集結し、ウッドストックが開催された1969年の夏に、ニューヨークのマンハッタンの公園で無料で行われた、もうひとつの歴史的野外音楽フェスティバルです。

自分の想う理想に近い野外フェスです。

今まで、全くといって良いほど認知されていなかった事にびっくりですし、知られていたら今の音楽の流れが大きく違っていたのではないかと思わざる終えない程の出来事だと思います。

時代背景的には、ベトナム戦争のさなかであり、マルコムXが1965年2月21日に暗殺され、キング牧師が1968年4月4日に暗殺され、ケネディ兄弟も暗殺され、アメリカのあちこちで暴動が起きた後の微妙な状況が背景にある頃でした。
爆発しそうな不満や怒りがあるからこそ、その緩和を目的の1つとして行われたと言われています。そのような時に多くの人が集まりましたが、大きなトラブルなく皆が音楽を楽しんだ様子が見れます。

自分の感想ですが、音楽が人の情緒に良い作用があるコトを再確認できたと感じています。

主催者

Tony Lawrence (トニー・ローレンス)(シンガーとしても活動していた。)が主催企画で、ステージ司会も務めました。

スポンサーに、マックスウェル・ハウス・コーヒー、およびニューヨーク市の公園・レクリエーション・文化部門があるようです。そして、当時のNY市長のJohn Vliet Lindsay(ジョン リンゼイ)の協力がありました。

この時代背景の中(だからこそとも言えるのだけど)、大物ミュージシャンや政治家や役所、企業、開催に必要な機材やスタッフなどのチームとの交渉し、この企画を実現させた事に驚きと感動を覚えます。

場所:ニューヨーク、ハーレムのマウント・モリス公園(現材のマーカス・ガーヴィ公園)

:1969年6月29日~8月24日までの日曜日 午後3時から 合計6回

1969年 ウッドストックフェスティバル(8月15日・16日・17日)と同じ夏 です。
ウッドストックとは趣が違って、日曜日の町中の公園、日常の中に現れる非凡な日常がそこの場に生まれる野外フェスです。

入場料:無料

参加アーティスト:27組

来場者数:約30万人

このコンサートの模様は、テレビ業界のプロデューサー、Hal Tulchin(ハル・トゥルチン)によって映像として記録され、その一部はニューヨークのWNEW-TVメトロメディア・チャンネル5(現WNYW)で、1969年6月~8月の土曜日の夜の午後10時30分に1時間、映像映像の一部が放送されましたが、それ以上の作品化や発信はできなかったようです。(ちなみに、ウッドストックは『ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間』という映画として発信され、説説化していきました。)

警備:ブラックパンサー党
警察は警備予定なかったが、開催中には警備に来てくれていた模様です。

自分勝手な見所や感想

まず、この野外フェスの企画自体に感動しました。無料で、身近な公園で、毎週のように日曜日、素晴しい音楽に会いに行ける。ピースフルでパワフル、そして皆のそれぞれのファッションと多様性。そういった場をこういった時代背景の中で生み出していることに驚きと感動がありました。Tonyスゲーな!って感じです。

ミュージシャン達の演奏は、皆とても生き生きとしていて、ビジネス的な雰囲気の演奏とは違う演奏に感じました。ミュージシャン達も普段はビジネスというものがつきまとう訳で、その時のスポンサーや客層によって演奏やステージ衣装などのステージングは変わってしまう事は良く悪くもあるでしょう。でも、このフェスでの演奏やステージングは、魂から素直に音や動きなどが生まれているように感じました。

それと、膨大な記録映像からQuesyloveだからこその映像選択だったり、その場だからこその演奏が選択され重要な要素が一つ一つ丁寧にパワフルに映し出されていると感じます。

ただ、このフェスティバルには色々な背景が見え隠れします。それらを視点を変えて3部作とかいくつかテーマ分けして映画にしたらな〜。とも思いました。

そういった意味でもありそうな演奏シーンを少しお伝えしたいと思います。

19歳のStivy Wonderがドラムを叩くシーンが冒頭に出てくることにワクワクしました。ドラムをめっちゃグルービーに叩きまくるのですが、ハイハットシンバルが揺れて揺れてまるでドラムセットが踊っているようにすら見えてしまいました。

キング牧師の盟友であるMahalia Jacksonがキング牧師が好きだった曲をMavis Staplesとデュエットするシーンでは、キング牧師が暗殺される前日の最後の会話のエピソードがあったり。

Sly&FamilyStoneでは、メンバーには白人も女性もいて、「Everyday People」でのメッセージ性や「Higher」など、エネルギーが爆発していたり。

Nina Simoneの言葉やジョージア大学に初めて入学した黒人女性のNina Simoneの曲とのエピソードがあったり。

The 5th Dimensionの「Aquarius」のエピソードがあったり。

映像1つ1つにメッセージが込められている様でした。

ここでのSly&FamilyStoneはまさに多様性の象徴に感じました。

それが50年前の出来事でハッキリとそこにはあったわけです。それから50年も経っているのに、あらゆるモノがとても凄くテクニカルになったけどその反面すごく薄っぺらく感じてしまうのは、こういったピースが歴史から抜け落ちていたからじゃないかとすら感じました。

このように見所しかなくて書き切れないけど、全ての演奏や曲の映像がスペシャルでありそれぞれに意味と意図がありカラフルにコラージュされているよう。色々な意味で重要な映像ばかりなのは間違いないと思います。

こういった意味を持つ出来事の記録が、しかも忘れ去られ歴史から見えなくなっていたこの出来事が、今この現代にひょっこりと現れた事がもの凄く感慨深いです。

このフェスの最中に、月面着陸のニュースが飛び込んできました。フェスに取材に来て「こんなフェスより月面着陸の方が重要ではないのか?」と言いたげな感じでインタビューをする現地レポーターや、それに答える人達の映像も映し出されるシーンがあって、今現在の脱成長の議論やサステナビリティ問題とのリンクを強く感じました。

月面着陸成功は素晴らしい出来事、このフェスも素晴らしい出来事。でも、科学の進歩の方が重要で文化はおまけくらいにしか認識していない人と日常の出来事に心血注ぐ人、どっちも同じ輪で繋がっているのに対立構造が出来上がる。その先にある目的は同じはず、無駄な悲しみを減らしたいし、安心したいし、希望を持ちたい。

でも、無慈悲な暴力が存在する以上はそんなに綺麗にはいかない。だからこそ、この野外フェスのような意味の重要さを感じます。

『Summer Of Soul』のすすめ

ドキュメンタリー映画って、ちょっと勉強っぽい感覚が混ざりながら観ることになる事が多いんだけど、この映画はそんな感じは全然無くて、とても刺激的でワクワクして、初めて何かを発見したような感覚を持ちながら観れました。

音楽をやっている人でもそういう場合があるかもですが、音楽を音の高さやリズムやアクセントの集合体としか感じられていなくて、音楽が色あせて聞えてしまっているなら、この映画を観ると良いかもしれないです。きっと、何か感じるはずです。

もの凄くピースフル・パワフル・ファッショナブルな場のエネルギーを感じて欲しい。音楽を愛する人はもちろん、そうでない人にも是非に観て欲しいと思う、久しぶりに、皆にお勧めしたい映画でした。

野外フェス自体を悪者扱いされることもありますが、こういった歴史や実績によって理解が深まった上での議論になって貰いたいものです。

あ、でもゴミはちゃんとそれぞれが持って帰るなりしないといけないですね~。

分る範囲での出演アーティスト リスト

最後に、主な出演アーティストを分る範囲で書き出しておきます。(注:コレと行った記録は見つけれなかったので、正確かどうかはまかりませんので参考程度に)

THE 5TH DIMENSION (フィフス ディメンション)
Abbey Lincol / Max Roach (アビー・リンカーン/マックス・ローチ)
The Edwin Hawkins Singers (エドウィン ホーキンズ シンガーズ)
GEORGE KIRBY / OLATONJI(ジョージカービィ/オラトゥンジ)
Mahalia Jackson (マへリア・ジャクスン)
The Staple Singers (ステイプル シンガーズ)
Prof.Herman Stevens&The Voice of Faith (ハーマン・スティーブンス&ボイス・オブ・フェイス)
Stevie Wonder (スティービー・ワンダー)
David Ruffin (デイビッド・ラフィン)
Gladys Knight & The Pips (グラディス・ナイト&メイヴィス・ステイプルズ)
Mongo Santamaria (モンゴ・サンタマリア)
Ray Barretto (レイ・バレット)
HerBie Man (ハービー・マン)
Sonny Sharrock (ソニー・シャーロック)
Nina Simone (ニーナ・シモン)
B.B.King (B.B.キング)
Hugh Masekela (ヒュー・マセケラ)
The Chambers Brothers (チェンバー・ブラザーズ)
HerBie Man (ハービー・マン)
Clare Walker & The Gospel Redeemers (クララ・ウォーカー&ザ・ゴスペル・リデューマーズ)
Sly & The Family Stone (スライ&ザ・ファミリー・ストーン)
Dinizulu & His African Dancers & Drummers (ディ二ズル&ヒズ・アフリカン・ダンサーズ&ドラマーズ)
Max Roch (マックス・ローチ)
Abbey Lincoln (アビー・リンカーン)



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Kazuya

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こんにちは。ブログやプロフィールで自分なりの考えを綴っているので、そんな人間が書いてるのを踏まえて読んでやって下さい。
ちなみに、プロフィール写真の我が子は現在高校生になっています。

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